【事案の概要】 ■離婚/慰謝料の別:離婚 ■理由:長期間の別居 ■依頼者:性別:女性 年代:50代 職業:派遣社員...
弁護士が解説する「共同親権」:法改正のポイントと親がすべき準備
民法改正で「共同親権」制度が導入され、離婚後の子育てのあり方は大きく変わります。本記事では弁護士が、共同親権の定義や単独親権との違い、法改正の背景・変更点、導入時期・適用範囲を徹底解説します。親の権利義務、合意形成や裁判手続き、養育費・面会交流、DV・児童虐待時の注意点まで、親が知るべき重要情報を網羅します。この記事を読めば、共同親権に関する疑問が解消され、適切な選択をするための具体的な道筋が見つかるでしょう。
1 共同親権とは何か
2024年5月に成立した民法等の一部を改正する法律により、離婚後の「共同親権」制度が導入されることになりました。これは、これまでの日本の離婚制度における「単独親権」を原則とする考え方から大きく転換するものであり、多くの親や子どもの生活に影響を与える重要な法改正です。この章では、共同親権の基本的な定義と単独親権との違い、そしてなぜ今、共同親権がこれほどまでに注目されているのかについて、弁護士の視点から詳しく解説します。
⑴ 共同親権の定義と単独親権との違い
共同親権とは、父母が離婚した後も、共同で子どもの親権を持つ制度を指します。親権とは、子どもを監護・養育し、その財産を管理する権利・義務の総称であり、具体的には子どもの教育方針の決定、医療行為への同意、住居の指定など、子どもの成長に関わる重要な事柄を決定する権限を含みます。
これに対し、従来の単独親権制度では、離婚時に父母のどちらか一方が親権者となり、その者が単独で子どもの親権を行使してきました。つまり、離婚後は親権を持たない親は、子どもの養育に関する法的決定権を失うことになっていました。
共同親権と単独親権の主な違いを以下の表で比較します。
|
項目 |
共同親権 |
単独親権 |
|
親権の行使者 |
父母双方 |
父母いずれか一方 |
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子どもの養育に関する意思決定 |
父母が協議して決定(原則) |
親権者が単独で決定 |
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子どもの監護 |
父母のどちらか一方、または双方が分担 |
監護親が主に行う |
|
子どもの財産管理 |
父母双方 |
親権者が単独で管理 |
|
法的代理権 |
父母双方 |
親権者が単独で代理 |
ここで重要なのは、共同親権が導入されても、必ずしも子どもが父母双方の家を行き来する「共同監護」が義務付けられるわけではないという点です。共同親権はあくまで親権の行使主体に関するものであり、子どもの監護のあり方は、父母間の合意や裁判所の判断によって柔軟に定めることができます。
⑵ なぜ共同親権が注目されているのか
近年、共同親権が日本で大きな注目を集めている背景には複数の要因があります。
① 子どもの利益の最大化
従来の単独親権制度では、離婚後、親権を持たない親と子どもとの関係が希薄になりがちでした。しかし、子どもが両親双方から継続的に愛情を受け、養育に関与してもらうことが、子どもの健やかな成長にとって重要であるという考え方が国際的に主流となっています。共同親権は、この「子どもの利益」を最大限に尊重する制度として期待されています。実際に、国連の子どもの権利条約においても、子どもは両親と定期的に個人的な関係及び直接の接触を維持する権利を有するとされています。
② 国際的な潮流
欧米諸国をはじめとする多くの国々では、離婚後も共同親権を原則とする制度がすでに導入されています。国際結婚の増加や、海外在住の日本人からの要望などもあり、日本の法制度を国際的なスタンダードに近づける必要性が高まっていました。法務省の調査によれば、海外24カ国のうち、離婚後も単独親権のみが認められているのはインドとトルコのみであり、多くの国で共同親権が認められています。
③ 離婚後の親の責任
離婚したからといって、親としての責任や役割がなくなるわけではありません。共同親権は、離婚後も父母双方が子どもの養育に責任を持ち、協力し合うことを促す制度です。これにより、片方の親に養育負担が偏ることを防ぎ、双方の親が子育てに関わる機会を保障することが期待されています。
④ 単独親権制度の問題点
これまでの単独親権制度では、親権を持たない親が子どもの教育や医療に関する情報にアクセスしにくく、また、面会交流の実施を巡るトラブルも少なくありませんでした。共同親権の導入は、これらの問題の解決に寄与し、より円滑な離婚後の共同養育環境を構築することを目指しています。
2 民法改正で共同親権はどう変わるのか
⑴ 共同親権に関する法改正の背景と目的
これまでの日本の法制度では、離婚後の親権は父母のどちらか一方のみが持つ「単独親権」に限られていました。しかし、この制度下では、離婚後に別居した親と子どもの交流が途絶えたり、養育費の支払いが滞ったりすることで、子どもが経済的・精神的な不利益を被るケースが少なくありませんでした。
また、国際的な視点から見ると、多くの先進国が離婚後の共同親権を認めており、日本も制度の見直しを求める声が高まっていました。
このような状況を受け、民法改正の最大の目的は、何よりも「子の利益」を確保することにあります。離婚後も父母が協力して子どもの養育に関わり、その責任を果たすことで、子どもが健全に成長できる環境を整えることを目指しています。これにより、離婚後の親権について、単独親権だけでなく共同親権という選択肢を広げることが目的とされています。
⑵ 新しい共同親権制度の主要な変更点
今回の民法改正により、離婚後の親権制度は大きく変わります。主な変更点は以下の通りです。
適用範囲としては、2026年4月1日以降に離婚する夫婦が対象となります。また、既に離婚して単独親権となっている元夫婦についても、施行日以降に家庭裁判所へ親権者変更の申し立てを行うことで、共同親権への変更が可能となります。
◆ 親権の選択肢の拡大
離婚する際、父母の協議によって共同親権と単独親権のいずれかを選択できるようになります。
協議が整わない場合や裁判離婚の場合は、家庭裁判所が子の利益を考慮して共同親権とするか単独親権とするかを決定します。その際、共同親権とすることが子の利益を害すると認められる場合(例えば、DVや児童虐待のおそれがある場合)には、裁判所は必ず単独親権を命じなければならないとされています。
◆ 親権行使の原則と例外
共同親権の場合、原則として子どもの進学や転居、重大な医療行為など重要な事項は父母が共同で決定します。しかし、日常の行為(食事、服装、軽微な病気の治療など)や、緊急避難、急を要する医療行為といった「急迫の事情」がある場合は、一方の親が単独で親権を行使できます。
共同で親権を行うべき事項について父母の意見が対立した場合は、家庭裁判所が一方の親に特定の事項について単独で親権を行使させる「親権行使者の指定」ができる仕組みが設けられました。
◆ 監護の分担
子どもの監護(養育)を分担することも可能となり、父母の協議でまとまらない場合は家庭裁判所が判断します。一方の親を「監護者」と定めた場合、その監護者は日常の監護教育、居所・職業の決定を単独で行うことができます。
◆ 養育費・親子交流の強化
養育費の確保をより確実にするため、「法定養育費制度」の導入や、不払い時の強制執行手続きの簡素化が進められます。また、子どもと離れて暮らす親だけでなく、祖父母などの親族も家庭裁判所が子の利益のために必要と認めた場合には、親子交流(面会交流)を申し立てることが可能になります。
3 共同親権を導入する際の具体的な手続き
共同親権制度が導入されるにあたり、実際にどのように共同親権を確立していくのか、その具体的な手続きについて理解することは非常に重要です。主に、父母間の話し合いによる合意形成と、家庭裁判所を通じた手続きの二つの経路があります。
⑴ 合意による共同親権
離婚する夫婦は、協議により、親権者を父母双方とすることを定めることができます。
もし父母間の話し合いで合意に至らない場合や、話し合いが困難な状況にある場合は、家庭裁判所の調停を利用することができます。調停委員が間に入り、双方の意見を聞きながら合意形成をサポートしてくれます。
⑵ 裁判手続きによる共同親権の決定
父母間の協議や調停が調わない場合は、訴訟で解決することになりますが、その場合、裁判所が、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮して、子の親権者を父母の双方にするか、父母のいずれか一方とするかを判断することになります。
ただ、①虐待のおそれがあると認められるとき、②DVのおそれその他の事情により父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき、は、家庭裁判所は必ず単独親権の定めをすることとされています。
4 共同親権に関するよくある疑問
⑴ 共同親権と養育費の関係
共同親権制度の導入は、養育費や面会交流のあり方にも影響を与える可能性がありますが、これらは共同親権とは独立して決定されるべき事項です。共同親権は、子どもの養育に関する意思決定を父母が共同で行うことを指し、養育費は子どもの監護に必要な費用を分担する義務、面会交流は離れて暮らす親と子どもが交流する権利と義務をそれぞれ意味します。
養育費については、共同親権下であっても、父母双方の収入や子どもの生活状況に応じて適切に算定されることが重要です。共同親権だからといって養育費の支払義務がなくなるわけではありません。むしろ、共同親権によって子どもの養育に関する情報共有が進むことで、より実情に即した養育費の取り決めが期待されることもあります。
⑵ 共同親権と面会交流の関係
面会交流に関しては、共同親権の目的が子どもの健全な成長と福祉の確保にあることから、原則として父母双方と子どもが継続的に交流を持つことが望ましいとされています。共同親権の合意形成の過程で、面会交流の頻度や方法、場所なども具体的に取り決めることが、子どもの安定した生活に繋がります。ただし、子どもの意向や安全を最優先し、柔軟な対応が求められます。
5 まとめ
本記事では、民法改正により導入される共同親権について、その基本的な定義から法改正のポイントを解説しました。共同親権は、離婚後も両親が協力して子どもの養育に関わることを原則とし、子どもの利益を最大化することを目的としています。新たな制度への移行には、親同士の建設的な話し合いや、必要に応じた専門家である弁護士への相談が不可欠です。不明な点や不安がある場合は、早めに弁護士に相談し、適切な準備を進めることが、お子様のためにも重要となります。
当事務所は離婚事件の取り扱いが多く、所属の弁護士は豊富な経験を有していますので、親権の問題に直面している方はお気軽にご相談ください。

























