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医師・歯科医師の離婚

はじめに

医師の離婚率は非常に高い

厚生労働省の「人口動態調査」から、離婚する夫婦の大まかな職業(別居する前の時点)を読み取ることができます。

令和2年の調査では、離婚した夫の職業として最も多かったのが、医師・弁護士などが含まれる「専門的・技術的職業従事者」となっており、全体の14.5%を占めていました。この数字は、従事者の人口が多いはずの「サービス職」や「生産工程職」の数を大きく上回っており、いかに医師を中心とする「専門的・技術的職業従事者」の離婚が多いかがわかります。

当事務所にご依頼のある離婚案件のなかでも、夫婦双方が医師であるケースや夫が医師であるケースは非常に多く、上記の統計が裏付けられる結果となっています。

医師の離婚が多い理由

1 時間的余裕がない

特に、勤務医の方に当てはまることですが、医師としての業務は、長時間労働が常態化していることが多く、夫婦間でのコミュニケーションが不足しがちです。その結果、些細な喧嘩を発端として、夫婦として修復不可能なほどに関係が悪化してしまうケースが見受けられます。

2 経済的に自立している

夫婦双方が医師であるケースなどでは、双方が経済的に自立しているため、双方とも離婚という決断を下しやすい環境にあるといえます。性格の合わない配偶者と一緒に暮らしていくより、自分一人で子育てをしていくという決断を早期に下される女性の方も多い印象です。

3 モラルハラスメントが多い

医師の方々は基本的に学力が高く、社会的にも成功者であるという自負もあるため、配偶者に自分の考えを強く押し付けてしまい、いわゆるモラルハラスメントとなってしまっているケースがよく見受けられます。

また、医師の方々は、医師になることをサポートしてくれた自分の親をとても大切にしている方が多い印象ですが、その結果、配偶者や義理の両親に対する気遣いが少なくなってしまい、家と家との抗争にまで発展してしまっているケースもあります。

4 不貞が多い

職場に異性が多い環境ということもあり、不貞が夫婦不仲の背景となっていることが多く見受けられます。

医師の離婚に特有な争点

1 財産分与

⑴ はじめに

医師は、一般的に収入が高く、婚姻期間を通じて多額の資産を形成していることが多いため、財産分与が複雑化する傾向があります。

婚姻後に個人事業としてクリニックを開業した場合などは、クリニックの資産も原則として財産分与の対象となり得るため、内容もかなり複雑化します。

以下、医師の財産分与に特有の論点についてQ&A方式で説明いたします。

Q1. 個人事業として経営しているクリニックの資産は財産分与の対象となりますか?

財産分与とは、夫婦で協力して取得した財産(夫婦共有財産)を分けることをいいますが、婚姻してから個人事業のクリニックを開設したような場合には、クリニック開設のために建築した建物やクリニック内で使用している医療機器等の設備も財産分与の対象となるのが原則です。

そして、クリニック内の設備等については、その時価評価が問題となります。減価償却の対象となる固定資産については、税務申告の際の「減価償却費の計算」の未償却残高の金額が参考になります。その他の資産については、中古市場における価格などが参考になります。

なお、クリニックを開業する際の資金を、婚姻前に保有していた資産や相続で譲り受けた財産から支出した場合は、クリニックの資産は特有財産となり、財産分与の対象とはなりません。

Q2.医療法人(持分の定めのある社団)としてクリニックを経営している場合の財産分与はどうなりますか?

医療法人の持分は、医療法人の時価相当額に対する割合的な権利といえます。したがって、婚姻してから持分の定めのある医療法人を設立したような場合には、その持分、すなわち、医療法人の時価相当額に対する割合的な権利も原則として財産分与の対象となります。

そして、医療法人は非営利が原則であり、配当等の手続が行えないことから、一般的に多くの内部留保が形成されています。その結果、医療法人の時価相当額が高くなり、持分の評価額も高額となる傾向があります。

ただ、医療法人の時価相当額の計算については、これといった決まった計算方法があるわけではないので、その計算方法が争点となります。

因みに、平成19年施行の第5次医療法改正以降、新規に設立可能な医療法人は「持分なし」の医療法人のみとなっており、以前の「持分あり」の医療法人については、持分を放棄し、定款変更することでこの形態に移行するのが原則とされていますが、移行作業はなかなか進んでいない状況です。平成31年の時点で、社団医療法人の総数は5万4416件に及びますが、そのうちの7割強の3万9263件は「持分あり」の医療法人で構成されています。

Q3.医療法人(持分の定めのない社団)としてクリニックを経営している場合の財産分与はどうなりますか?

持分のない場合は、医療法人の資産に対する払戻請求権や残余財産分配請求権が存在せず、そもそも財産を保有していないことになりますので、医療法人名義の資産については原則として財産分与の対象とはなりません。

ただ、個人事業として経営してきたクリニックを離婚(別居)の直近で医療法人化した場合などは、医療法人名義の財産であっても、実質的には個人の財産と看做されて、財産分与の対象となることがあります。

また、医療法人の保有資産が婚姻後に著しく増加した場合などは、実質的には夫婦が築いたものと評価し、妻に対して一定の財産分与を行うこともあります。

Q4.MS法人(メディカルサービス法人)の株式や持分は財産分与の対象となりますか?

MS法人は法的には株式会社若しくは合同会社であり、株式会社の場合はその株式が、合同会社の場合はその持分が財産分与の対象となります。

医療法人の持分と同じく、その評価が争点となります。

Q5.離婚する妻が医療法人の理事となっていますが、離婚のタイミングで理事を辞めてもらうことはできますか?

医療法人の役員は、いつでも社員総会の決議によって解任することができます(医療法第46条の5の2)。したがって、離婚のタイミングで妻の理事の職を解任することも可能です。

ただし、解任に正当な理由がない場合には、解任された役員は医療法人に対して損害賠償を請求することができますので、穏便な対応としては任期満了による退任時に重任しないという方法を選択することになります。

Q6.独身時代にアルバイトをたくさん掛け持ち、貯金を増やしたのですが、その貯金も財産分与の対象となりますか?

結論からいうと、婚姻前に取得した財産は、夫婦の経済的協力関係から生み出されたものではありませんので、特有財産であり、財産分与の対象とはなりません。

但し、離婚時に存在する夫婦双方の財産は、基本的には共有財産であると考えられているところ、一部の財産が特有財産であることの証明は主張する者が行う必要がありますが、この立証は意外と困難であることがあります。

例えば、預金については、独人時代の特有部分と婚姻後の共有部分が混在している口座などでは、お金は無色透明で口座残高のうちどの部分が特有財産か区別することが困難であることから、原則に立ち返って全体について共有財産であると判断されてしまうケースもあります。

⑵ 裁判例の紹介

① 医療法人(持分あり)の出資持分を分与対象とし、純資産の7割相当を評価額とした事例(大阪高判平成26年3月13日)

裁判所は、医療法人の保有資産は分与対象財産とはせず、医療法人の出資持分を分与対象財産としました。

また、出資持分の評価としては、医療法人の純資産の7割とし、夫から妻に対して金銭で分与することを定めました。

なお、分与割合については、夫6割、妻4割と定めました。

2 養育費・婚姻費用

⑴ 高額所得者の計算方法

医師の方は高額所得者であることが多く、個人事業でクリニックを経営している場合などでは年収が数千万から1億円に上る方もいらっしゃいます。

婚姻費用や養育費については、夫婦双方の収入を基準として計算することになりますが、裁判所の改定標準算定方式では給与所得者については2000万円、自営業者は1567万円が上限となっており、上限を超過している場合にどのように計算するのかが問題となります。

婚姻費用(養育費)について実務で用いられる計算方法は主に以下の4つに分けられます。

ア 上限頭打ち方式

改定標準表の上限年収で計算する方法です。例えば、給与所得者で2500万円の年収があるケースであっても、上限年収の2000万円で計算します。

実務では、この計算方法は年収2000万円から2500万円程度までの収入層で良く用いられます。

イ 基礎収入割合修正方式

標準計算方式では、給与所得者の上限年収2000万円に対応する基礎収入割合は38%ですが、この割合を下げて妥当な金額を導こうとする計算方法です。

具体的には、年収6000万円のケースで、基礎収入割合を上限年収2000万円の38%から27%というような低い割合に下げて基礎収入を計算します。

実務では、この計算方法は年収1億円までの収入層で用いられることが多いようです。

ウ 貯蓄率控除方式

標準計算方式は維持しつつ、高額所得者の場合は収入のうち貯蓄・資産形成に回る部分が大きくなることから、これを計算に反映させる計算方法です。

具体的には、年収3500万円の方は、上限年収2000万円の方よりも貯蓄率が7%ほど超過するので、これを基礎収入から控除する計算方法です。

実務では、この計算方法は上記の基礎収入割合修正方式と同じく、年収1億円までの収入層で用いられることが多いようです。

エ フリーハンド算定方式

同居中の生活水準を維持すること前提として、必要な生活費を特定する計算方法です。

具体的には、同居中に夫から妻に毎月渡していた生活費の金額を基準に婚姻費用の金額を決めます。

以上のように、婚姻費用(養育費)の計算方法については、上記のとおり、主に4つの計算方法がありますが、実務的には概ね月額100万円程度が上限と考えられているようです。

⑵ 裁判例の紹介

ア 年収約6000万円の医師の基礎収入割合を27%とした事例(福岡高決平成26年6月30日)

裁判所は、標準算定方式によって養育費を計算する際の義務者の基礎収入割合を27%としました。

イ 年収約4000万円の義務者の基礎収入割合において貯蓄率7%を控除した事例(東京高決平成28年9月14日)

  裁判所は、前提となる基礎収入から貯蓄率を考慮して最終的な基礎収入を計算しました。具体的には、総収入から税金・社会保険料を控除した金額の7%が貯蓄に回されているものとして、基礎収入から控除することにしました。

⑶ 養育費・婚姻費用に関連するその他の争点

ア 退職・転職・開業に伴う収入減少

医師の方々のなかには、離婚(別居)のタイミングで、勤務していた病院を退職して大学の研究医に転職したり、個人事業としてクリニックを開業したりして、その結果、収入が一時的に減少してしまう方がいらっしゃいます。

このような場合、義務者の退職・転職や開業が時期や経緯から見て自然であって、養育費や婚姻費用を下げる目的でないことが明らかな場合は、減額後の収入を用いて養育費や婚姻費用を計算することになります。

もっとも、退職や転職の理由がはっきりしない場合や減額後の実際の収入を用いて計算すると夫婦間の公平が図られない場合は、従前と同程度の潜在的稼動能力があるものと考え、養育費や婚姻費用を計算することがあります。

イ 収入の変動

クリニックを開業した場合、サラリーマンの給与と違って固定給が保証されているわけではなく、時期によって収入が変動する可能性があります。

このようなケースでは、直近年度の収入のみで計算することは妥当ではないことから、過去数年の平均を取るなどして養育費や婚姻費用を計算することが一般的です。

ウ 私立学校・大学の学費、習い事の費用

標準算定方式では、子の教育費として公立の小中高の学費が前提となっています。

もっとも、医者の子は、医師になることを目指して私立中学校や塾・予備校に通っていることも多く、それらの標準的な学費を超える教育費をどのように扱うかが争点となります。

この点に関する判断の枠組みとしては、義務者が承諾した費用と義務者の収入や学歴からしてその負担が不合理でない費用については、標準算定方式で計算される養育費に標準的な学費を超える部分を加算することになります。

医師の離婚が特に弁護士に依頼したほうが良い理由

1 共有財産の範囲の確定、評価が難しい

離婚の当事者である医師がクリニックを開業している場合などでは、クリニックの資産や医療法人の持分が共有財産に含まれることがありますが、その資産的価値を評価するのは簡単なことではありません。医師の離婚を数多く扱ったことのある専門家に依頼し、共有財産の範囲や評価について十分な主張立証を準備する必要性があります。

2 養育費・婚姻費用の算定について裁判所の標準算定方式が使えない

医師は高額所得者であるケースが多く、裁判所の標準算定方式の上限年収を超えてしまっている場合では、簡単に養育費、婚姻費用を計算することができません。また、医師特有の収入変動や子に対する特別な教育費等の問題もあり、養育費や婚姻費用の決定についても困難を極めることがあります。裁判所の訴訟や審判で決着することも想定して、主張立証の準備を進めることが大切です。

当事務所が選ばれている理由

1 豊富な経験

当事務所は、離婚事件を数多く取り扱っておりますが、そのなかでも当事者である夫婦の一方ないし双方が医師であるケースは割合的に多い状況となっております。当事務所の弁護士はご相談の早期から医師特有の問題に対してしっかり意識を持ち、その問題点が早期に解決できるようにサポートさせて頂いております。

2 医療業界についての正確な知識

また、医師の離婚においては、医療法人に関する知識、医師業界特有の慣行などについての最低限の理解も必要となりますが、当事務所は離婚事件ではない分野において医療法人の法律顧問を複数担当させて頂いており、医療業界についての正確な知識も有しております。医師の方々の生活スタイルなどについてもある程度理解しておりますので、法律面以外の心配事もお気軽にご相談頂けます。

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