■目次 1. 離婚協議書とは 2. 離婚協議書に記載すべき内容 3. 離婚協議書を作成する流れ 4. 離婚協議書...
離婚にあたって検討すべき6項目
離婚にあたっては、主に以下の6項目を検討する必要があります。ご夫婦で離婚の協議を進めるにあたっては、これら6項目を頭において協議することによって概ね離婚の条件を漏らすことなく決定できるはずです。
①親権者の指定
②面会交流
③養育費(離婚成立後)・婚姻費用(離婚成立前)
④財産分与
⑤慰謝料
⑥年金分割
- なお、①親権者の指定については、離婚の際に必ず決めなければなりませんが、②面会交流から⑥年金分割の5項目については、離婚後に決めることも可能です。もっとも、これらの項目を離婚後に決めようとした場合、離婚をした相手と離婚後に継続して話し合いをしなければなりません。離婚の話とは別に、余分に時間も手間もかかり面倒ですし、精神的にも負担がかかります。そのため、当事務所では、離婚の諸条件については、できる限り離婚時に合わせて決めておくべきであると考えています。
まずは相手の離婚の意思の確認
以上の6項目を協議する大前提として、まずはじめに相手の離婚の意思を確認しなければなりません。相手に離婚の意思がない場合には離婚の条件にまで話し合いが進まない可能性が高い以上、まず相手の離婚の意思を確認するのは当然のことですが、相手が離婚を拒否する場合でも、その理由を必ず確認してください。相手が離婚を拒否する理由によって、こちらの対応は変わってきます
例えば「好きだから別れたくない」というのであれば、協議を続けて早期に離婚という結論に至るのは難しいかもしれません。離婚調停、離婚訴訟といった裁判所での手続きも検討する必要があります。また、お金の問題である場合には、こちらが譲歩を増やすことで早期に解決するかもしれません。いずれにしても、まずは相手の離婚の意思を確認し、離婚を拒否する場合にはその理由を確認しましょう。
①親権者の指定
ご夫婦にお子さんがいる場合には、先に申し上げたとおり、ご夫婦のどちらが離婚後のお子さんの親権者になるかを決めなければなりません。ご夫婦の協議によって離婚後の親権者を決めることができた場合には、離婚届の所定の欄に親権者を記載します。ご夫婦のどちらも親権を主張する場合には、残念ながらご夫婦だけの話し合いで親権者を決めるのは難しいと言わざるを得ません。その場合は、早期に協議を切り上げて離婚調停に移行することを検討すべきです。
②面会交流
ご夫婦が離婚した場合、お子さんは離婚後の親権者となった親と生活することになり、一方の親とは離れて暮らさざるを得ません。しかし、離婚したとしても、お子さんにとって、ご夫婦がお父さんとお母さんであることに変わりありません。お子さんの健全な成長のためには、離れて暮らす親とお子さんの面会の機会を作る必要があります。そのため、離婚にあたっては、親権者を決めると同時に、離れて暮らすことになる一方の親とお子さんとの面会交流の条件を決めておく必要があります。
なお、家庭裁判所では、問題がない限り、ひと月に1回程度の面会交流を行うことが推奨されています。
③養育費・婚姻費用
お子さんを引き取って養育していくには否が応でもお金がかかります。親権や面会交流を決めておくことはもちろん重要です。それと同様に、お子さんの養育にお金が必要不可欠である以上、離婚後にお子さんの養育にかかる費用(養育費)を、夫婦のどちらがどのように負担していくかを決定しておくことも同じように重要です。
また、ご夫婦が離婚を前提に別居したとしても、早期に離婚の条件が決まり直ちに離婚成立に至るとは限りません。離婚成立までには相応の時間を要する場合が通常です。特に、夫婦の一方が専業主婦(夫)であった場合には、別居中の生活費に不安を覚えるのは当然です。そこで、別居してもすぐには離婚の条件が決まらず離婚成立とはならない場合には、別居中の生活費(これを婚姻費用といいます)を決定する必要も出てきます。ご夫婦の話し合いで婚姻費用を決めることができない場合には、家庭裁判所に婚姻費用分担調停を提起する必要があります。
これら養育費・婚姻費用の具体的な金額は、ご夫婦双方の収入(事業者か給与所得者かによっても変わります)、お子さんの人数・年齢、夫婦のこれまで支出の状況等を考慮して決定されますが、家庭裁判所の調停などでは、概ね裁判所から発表された算定表によって算定されます。下記に裁判所のURLを張り付けておきます。ご自身が受け取ることのできる養育費・婚姻費用を確認されたい方はこちらをご覧ください。
平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について
④財産分与
ご夫婦の間に婚姻中に取得した財産(共有財産)がある場合には、離婚にあたって、この共有財産を清算するための分配の仕方(金額・方法)を決めなければなりません。これを財産分与といいます。
財産分与の対象となる財産は、金銭的な価値があり、お金に換算できるものであればすべての財産がその対象となります。預貯金や自宅不動産、自動車といった財産はすぐにイメージできると思います。また、生命保険の解約返戻金、有価証券(株券や投資信託など)なども含まれます。一般の方は、見落としがちですが、サラリーマンの場合、社内預金や退職金、企業年金といった財産も対象に含まれます。
但し、財産分与は夫婦が婚姻中に協力して築いた財産を清算する制度ですので、夫婦が婚姻中に夫婦の協力によって取得した共有財産のみが対象となります。そのため、夫婦の一方が婚姻前から持っていた財産は財産分与の対象とはなりません。また、婚姻中に取得した財産であっても、親から相続した財産や贈与を受けた財産は、夫婦の協力によって取得したわけではありませんので、財産分与の対象とはなりません。これらの財産を特有財産といいます。
なお、分与の割合については、男女平等などの観点から、夫婦それぞれ2分の1ずつとされるのが一般的です(これを「2分の1ルール」といいます)。
⑤慰謝料
ご夫婦が離婚するに至ってしまったことについて、どちらか一方に主な原因があると認められる場合には、慰謝料請求が認められる場合があります。
離婚に関するご相談者の中には、離婚する場合には、必ず慰謝料請求が認められると思われている方も相当数いらっしゃるように感じます。しかし、夫婦が離婚するからといって、どんなケースでも必ず慰謝料請求が認められるわけではありません。どちらかに離婚の原因があり離婚の成立は認めたとしても慰謝料請求までは認めないという裁判所の判断もあり得ます。
語弊を憚らずに言えば、第三者から見た場合には、ご夫婦関係では「どっちもどっち」といった事情は往々にしてあり得るものです。特に、離婚の原因が性格の不一致といった場合には、慰謝料請求は認められない場合もよくあります。そのような場合に、ご夫婦で離婚協議を進める場合には、慰謝料にこだわり過ぎ協議が難航し過ぎないようご注意ください。
⑥年金分割
日本の年金制度の下では、すべての国民が基礎年金(国民年金)に加入することになっています。それに加えて、サラリーマンや公務員の方は、この基礎年金(国民年金)に上乗せされた厚生年金・旧共済年金に加入されています。このように、日本の年金制度は、1階部分の基礎年金と2階部分の厚生年金・旧共済年金という2階建ての構造となっています。
年金分割は、この2階部分にあたる厚生年金・旧共済年金について、婚姻中の年金保険料納付記録を分割する手続きです。
婚姻中の年金保険料納付記録を分割する制度ですので、離婚時に相手から一定の金額をもらえるという制度ではありません。ご自身が年金受給年齢に達した際に、ご自身が納付した年金保険料納付記録に基づく年金額に、年金分割によって分割された年金保険料納付記録に基づく年金額が上乗せされ、その分増額した年金が国から支払われることになります。
仮に、年金分割の割合についてご夫婦の話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所の審判で年金分割の割合を決めてもらうことができますが、その場合、ほぼ100%と言ってよいケースで、分割割合上限の0.5(2分の1)とされます。したがって、年金分割の割合で争うのは、時間を浪費するだけになりかねませんのでお勧めできません。
年金分割は、離婚の相手がサラリーマンや公務員である場合には、必ず検討しなければならない制度です。
まとめ
離婚にあたっては、以上の6項目を検討すべきです。当事務所では、ご相談にあたるすべての弁護士が、この6項目に従い事情の聞き取りをさせていただいております。離婚を考えているけれど、何から手を付けたらいいかわからない、何を話し合うべきかわからないという方、当事務所は初回60分無料でご相談を承っておりますので、是非一度当事務所にご連絡ください。