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医師の離婚における財産分与の注意点|医療法人の持分や分与割合を解説

目次

医師の離婚では、一般的な財産分与とは異なり、高額な資産や医療法人の「出資持分」の取り扱いなど、医師特有の複雑な問題が発生します。

この記事では、医師の離婚における財産分与の注意点や、医療法人名義の財産の扱い、そして「2分の1ルール」の例外となる分与割合について、法律の専門知識を交えて分かりやすく解説します。

結論として、医師の財産分与は特有の資産評価が必要なため、専門の弁護士へ相談することが公平な解決への近道です。この記事を読めば、損をしないための具体的な対策と注意点がすべて分かります。

 

  1. 財産分与とは

離婚における「財産分与」とは、婚姻生活中に夫婦が協力して築き上げた財産を、離婚時または離婚後に分け合う制度です。

財産分与は、単に「お金を分ける」というだけでなく、以下の3つの要素(性質)を含んでいます。

財産分与の性質

具体的な内容

清算的要素

婚姻中に夫婦が協力して築いた共同財産を、名義にかかわらず貢献度に応じて公平に分け合う、最も基本となる財産分与です。

扶養的要素

離婚によって夫婦の一方が生活に困窮するおそれがある場合に、自立するまでの生活を保障(扶養)する目的で支払われるものです。

慰謝料的要素

離婚原因を作った有責配偶者(不貞行為やDVなどを行った側)が支払うべき精神的苦痛への損害賠償(慰謝料)を、財産分与に含めて支払うものです。

 

1.1 財産分与の対象となる財産(共有財産)

財産分与の対象となるのは、婚姻期間中に夫婦が協力して形成・維持してきたすべての財産(共有財産)です。

これは、財産の名義がどちらになっているかを問いません。例えば、夫の単独名義になっている預貯金口座や不動産であっても、婚姻中の収入から得たものであれば、実質的には夫婦の共有財産とみなされます。

共有財産に該当する代表的な例は以下の通りです。

・夫婦それぞれの名義の預貯金(婚姻後に貯蓄された部分)
・婚姻中に購入した不動産(マイホームや土地など)
・家具・家電、自動車などの高価な動産
・婚姻中に購入した有価証券(株式、投資信託など)
・婚姻期間に対応する退職金(将来支払われる見込みが高いものを含む)
・婚姻中に加入し、解約返戻金がある生命保険や学資保険

 

1.2 財産分与の対象とならない財産(特有財産)

一方で、夫婦の協力とは関係なく取得した財産は「特有財産」と呼ばれ、財産分与の対象から除外されます。

民法第762条第1項に規定されている通り、婚姻前から各自が所有していた財産や、婚姻中であっても個人の資格で得た財産がこれに該当します。

特有財産に該当する代表的な例は以下の通りです。

・結婚する前から各自が保有していた預貯金や有価証券
・婚姻中に、親や親族から相続によって取得した実家の土地や遺産
・親から個人的に援助(贈与)された資金
・各自が日常的に使用している衣服や身の回り品

 

1.3 財産分与を請求できる期限(除斥期間)に注意

財産分与は、離婚と同時に取り決めるのが一般的ですが、離婚後に請求することも可能です。ただし、財産分与を請求できる期間には法律上の期限が設けられています。

民法の改正により、財産分与の請求期限は従来の「2年」から「5年」へと延長されました。具体的な適用ルールは以下の通りです。

・令和8年(2026年)4月1日以降に離婚した場合:離婚した日の翌日から起算して5年以内に請求する必要があります。

・令和8年(2026年)3月31日以前に離婚した場合:離婚した日の翌日から起算して2年以内に請求する必要があります。

この期限(除斥期間)を過ぎてしまうと、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることができなくなります。離婚後に財産分与を求める場合は、期限に遅れないよう迅速に手続きを進めることが重要です。

 

  1. 医師特有の財産分与の対象(高価な動産・有価証券・退職金など)

医師の離婚において、財産分与の対象となる資産は、一般的な会社員家庭に比べて多額かつ多岐にわたる傾向があります。婚姻中に夫婦で協力して築き上げた財産は、名義がどちらであっても原則として「共有財産」となり、財産分与の対象です。ここでは、医師の家庭で特に対象となりやすい代表的な財産とその評価方法について解説します。

 

2.1 高価な動産(高級車・高級時計・美術品・ゴルフ会員権など)

医師の家庭では、日常生活で利用する家財道具にとどまらず、資産価値の高い動産を所有しているケースが多々あります。これらは処分時の査定額(時価)を基準として評価し、財産分与の対象とします。

具体的には、以下のような動産が挙げられます。

・高級外車・国産高級車:購入価格ではなく、離婚時(または別居時)の査定価格(中古車市場価格)を基準にします。ローンが残っている場合は、査定額からローン残高を差し引いた金額が評価額となります。

・高級腕時計・宝飾品・美術品:ロレックスなどの高級時計やダイヤの指輪、絵画などは、専門の買取業者による査定額をベースに算出します。

・ゴルフ会員権:取引相場が存在するものは、別居時点での相場価格を基準に評価します。

 

2.2 有価証券・投資信託・暗号資産

高収入である医師は、余剰資金を株式や投資信託、国債、外貨預金、あるいは暗号資産(仮想通貨)などで運用していることが少なくありません。これらもすべて財産分与の対象です。

有価証券等の評価で重要となるのは、「いつの時点の価値を基準にするか」という基準時です。一般的には、有価証券等の数量は、夫婦の協力関係が終了したとされる「別居時」の数量を基準とします。一方で、評価額については、「離婚時」を基準とすることになります。つまり、株式を例にすると、別居時の数量(株式数)を基準に、離婚時の価格(株価)で分与対象の株式の評価額を決めることになります(評価額=別居時の株式数×離婚時の株価)。

 

2.3 退職金(勤務医・開業医)

将来受け取る予定の退職金についても、「将来支払われる蓋然性(確実性)が高い」と認められる場合は、婚姻期間に対応する部分が財産分与の対象になります。医師の雇用形態によって、退職金の扱いが以下のように異なります。

2.3.1 勤務医(大学病院・公立病院など)の退職金

勤務先の退職金規定に基づき、仮に「別居時に自己都合退職した」と仮定した場合の退職金相当額を算出します。そのうち、婚姻期間に対応する額が財産分与の対象となります。公立病院の医師(地方公務員)や大学病院の医師は退職金の支給がほぼ確実視されるため、対象になりやすいです。

2.3.2 開業医(個人事業主)の退職金代わりの共済・保険

個人事業主である開業医には、一般的な意味での「退職金」はありません。しかし、将来の退職金代わりに加入している「小規模企業共済」や「生命保険(解約返戻金があるもの)」などは、別居時点での解約返戻金相当額を算出し、財産分与の対象とします。

医師の区分

退職金・共済の主な評価方法

勤務医

別居時に自己都合退職したと仮定した退職金相当額(婚姻期間分)

開業医(個人事業主)

小規模企業共済や退職金代わりの生命保険の解約返戻金相当額

 

2.4 高額な生命保険・学資保険(解約返戻金)

医師の家庭では、万が一の備えや節税対策、あるいは子どもの教育資金準備(医学部進学など)のために、高額な生命保険や学資保険、養老保険に加入しているケースが非常に多いです。

これらの保険は、別居時点で解約したと仮定した場合に支払われる「解約返戻金(かいやくへんれいきん)」が財産分与の対象となります。掛け捨て型の保険は解約返戻金がないため対象外ですが、積立型の保険は保険会社から「解約返戻金証明書」を取り寄せて評価額を確定させます。子ども名義の学資保険であっても、原資が夫婦の共有財産から支払われている場合は、原則として財産分与対象となります。

 

2.5 不動産(自宅・セカンドハウス・投資用マンション)

医師が所有する不動産には、家族で暮らす自宅のほか、別荘(セカンドハウス)や資産運用目的の投資用マンションなどが含まれることがあります。不動産は金額が大きいため、財産分与において最も争いになりやすい項目の一つです。

2.5.1 アンダーローンの場合

不動産の現在の市場価格(査定額)が住宅ローンの残高を上回っている状態をアンダーローンと呼びます。この場合、市場価格から住宅ローン残高を差し引いた差額分が財産分与の対象となります。例えば、査定額が8,000万円でローン残高が5,000万円であれば、差額の3,000万円が分与対象の価値となります。

2.5.2 オーバーローンの場合

不動産の市場価格よりも住宅ローンの残高が多い状態をオーバーローンと呼びます。この場合、不動産としての実質的な価値はマイナスとみなされるため、財産分与の対象から除外される(価値をゼロとして扱う)のが一般的です。ただし、他のプラスの財産と相殺して清算することもあるため、全体の資産バランスを考慮した慎重な判断が必要です。

 

  1. 【要注意】医療法人の「出資持分」の扱いについて

医師が医療法人を経営している場合、離婚時の財産分与において最も複雑で高額になりやすいのが「医療法人の出資持分」の扱いです。出資持分は、医療法人の設立時期や種類によって財産分与の対象になるかどうかが大きく異なります。

 

3.1 持分の有無による財産分与対象の違い

医療法人には、大きく分けて「持分あり医療法人」と「持分なし医療法人」の2種類が存在します。平成19年(2007年)4月1日の医療法改正を境に、新設される医療法人はすべて持分なし医療法人となりました。「持分なしの医療法人」の場合には、出資持分という概念自体が存在しないため、原則として財産分与は問題となり得ません。一方で、平成19年4月より前に設立された「持分あり医療法人」の場合は、出資持分に応じた退社時の払戻請求権や解散時の残余財産分配請求権が存在するため、その出資持分が財産分与の大きな争点となります。

 

3.2 財産分与の対象となる「出資持分」の範囲

婚姻期間中に夫婦の共同財産を原資として設立された医療法人、または婚姻中に出資して得た持分であれば、原則として財産分与の対象となります。

3.2.1 親族名義の持分が対象となるケース

医療法人の設立にあたっては、医師である配偶者本人の名義だけでなく、その親や親族の名義で出資が行われているケースが多々あります。形式的には親族名義であっても、実質的な出資原資が婚姻中に夫婦で築いた共同財産(診療所の売上や夫婦の預貯金など)である場合には、実質的に夫婦の共有財産とみなされ、財産分与の対象に含まれることがあります。夫婦の共有財産から出資されたことを立証できることが重要です。

 

3.3 出資持分の金銭評価方法

「持分あり医療法人」の出資持分を財産分与する際、その価値をどのように評価するかが極めて重要です。医療法人は会社法上の株式会社とは異なり、剰余金の配当が法律で禁止されています(医療法第54条)。そのため、毎年の利益が内部留保として法人内に蓄積されやすく、出資持分の評価額が設立当初の出資額をはるかに超えて高額化しているケースが非常に多く見られます。

3.3.1 純資産価額方式による評価と割引率

出資持分の評価は、原則として医療法人の「純資産価額(総資産から負債を差し引いた額)」を基準に算定されます。しかし、医療法人が今後も事業を継続する場合、直ちに持分を払い戻して現金化できるわけではありません。そのため、将来の不確実性や経営の安定性を考慮し、純資産価額の100%ではなく、7割(70%)程度に割り引いて評価するという裁判例(大阪高裁平成26年3月13日判決)も存在します。

 

 

3.4 出資持分を財産分与する方法

医療法人の出資持分が財産分与の対象となる場合であっても、出資持分そのものを非医師である配偶者に譲渡することは原則として行われません。医療法人の社員(出資者)としての地位や議決権が非医師に渡ると、法人の経営権が混乱し、医療機関としての正常な運営に支障をきたす恐れがあるためです。

そのため実務上は、出資持分の評価額を算定した上で、その分与割合に相当する金額を「代償金(金銭)」として相手方に支払う方法で解決を図るのが一般的です。一括での支払いが困難な場合には、分割払いの合意や、他の共有財産(自宅不動産や預貯金など)の配分を調整することで対応します。

 

  1. 医療法人名義の財産は分与の対象になるか?

医師が離婚する際、自身が経営する医療法人名義の預貯金や不動産、医療機器などが財産分与の対象になるのかという点は、非常に多く寄せられる疑問です。結論からお伝えすると、医療法人名義の財産は、原則として財産分与の対象にはなりません。

しかし、これにはいくつかの重要な例外や、実質的に財産分与の額に影響を与える仕組みが存在します。

 

4.1 原則:医療法人名義の財産は財産分与の「対象外」

財産分与の対象となるのは、婚姻中に夫婦が協力して築き上げた「個人の共有財産」です。これに対し、医療法人は法律上、医師個人とは全く別の人格(法人格)を持っています。

そのため、いくら医師個人が実質的に経営を支配しているクリニックであっても、医療法人名義になっている病院の土地・建物、医療機器、法人の口座にある預貯金などは、すべて「法人の財産」であり、夫婦の共有財産には該当しません。したがって、離婚の際にこれらを直接分け合うよう請求することは原則として認められません。

 

4.2 例外:実質的に財産分与の対象・影響となる3つのケース

原則として法人名義の財産は対象外ですが、以下のようなケースでは、実質的に財産分与の対象となったり、分与額の算定に影響を与えたりします。

4.2.1 出資持分の評価を通じて間接的に反映される

先に記載しました「出資持分のある医療法人」の場合、医師が持つ「出資持分」は個人財産であるため、財産分与の対象となります。この出資持分の価値(評価額)を算出する際には、医療法人が保有する純資産(法人名義の資産から負債を差し引いた額)が基準となります。

つまり、法人名義の財産そのものを直接分与することはできなくても、持分の評価額を通じて、間接的に法人名義の財産が財産分与の金額に反映されることになります。この評価額は、クリニックの規模が大きいほど高額になる傾向があり、医師側にとっては大きな負担となるリスクがあります。

4.2.2 医療法人から支給される「退職金」

医療法人の役員(理事長など)である医師が、将来法人から受け取る予定の退職金は、財産分与の対象になる可能性があります。退職金は法人の規定に基づいて支払われる「法人名義の財産(資金)」から支出されますが、実質的には医師個人の賃金の後払い的性格を持つためです。

すでに退職金が支払われている場合はもちろん、将来退職金が支払われる蓋然性(確実性)が高いと判断される場合には、婚姻期間に対応する部分が財産分与の対象として認定されます。特に、自身が理事長を務める医療法人のように、退職金の支給がほぼ確実視されるケースでは注意が必要です。

 

4.2.3 個人財産と法人財産が混然一体となっている場合

医療法人という形式をとってはいるものの、実態は個人の財布と区別がついておらず、法人の資金を私的に流用していたり、個人の資産を隠す目的で法人名義にしていたりするような極めて例外的なケースです。

このように個人と法人の財産が混然一体となっており、法人格が形骸化しているとみなされる場合、裁判所から実質的な個人財産(夫婦の共有財産)と判断され、分与対象に含まれる可能性があります。健全な法人運営を行っている場合はこのような判断をされることはありませんが、公私の区別が曖昧な個人クリニックなどでは争点になることがあります。

 

4.3 医療法人の財産に関する分与対象の整理

医療法人に関わる様々な財産について、財産分与の対象になるかどうかを以下の表に整理しました。

財産の種類

分与対象になるか

詳細・注意点

医療法人名義の不動産・医療機器・預貯金

原則として対象外

法人格が異なるため、直接の分与対象にはならない。

出資持分(持分あり医療法人)

対象となる

婚姻期間中に形成・価値が増加した部分が対象。評価額は法人の純資産を基準に算出される。

出資持分(持分なし医療法人)

対象外

持分という概念がないため対象外。

医療法人から支給される役員報酬・給与

対象外(受け取り後は対象)

法人から支払われる前の報酬は対象外だが、受け取って個人の預貯金となったものは共有財産となる。

将来支給される退職金

対象となる可能性あり

支給される蓋然性が高い場合、婚姻期間に対応する部分が分与対象となる。

 

  1. 医師の財産分与の割合について(2分の1ルールの例外)

離婚時の財産分与において、夫婦が共同で築いた財産は「2分の1」ずつに分けるのが原則(2分の1ルール)です。しかし、医師の離婚においては、この原則が修正され、医師側の分与割合が高くなる例外が認められるケースがあります。

 

5.1 なぜ医師の財産分与で2分の1ルールが修正されるのか

財産分与の2分の1ルールは、夫婦が共同生活の中で互いに協力し、対等な貢献(寄与)によって財産を形成したという前提に基づいています。しかし、医師のように資格取得や技術習得に多大な個人的努力が必要であり、その特殊な能力や個人の才覚によって高額な資産が築かれた場合には、その貢献度(寄与度)が均等とはみなされないことがあります。

特に、以下のような要素がある場合、医師側の寄与度が大きく評価され、分与割合が50%から引き上げられる傾向にあります。

・医師免許という国家資格を取得するまでの婚姻前の個人的な勉学や努力
・高度な専門的知識や医療技術を用いた、婚姻中の過酷な労働と高額な収入
・個人開業医や医療法人の経営者としての卓越した経営手腕や采配

 

5.2 財産分与の割合が修正された代表的な裁判例

実際に、医師の離婚において2分の1ルールが修正され、医師側の寄与度が高く評価された裁判例を紹介します。

先ほども記載しました大阪高等裁判所平成26年3月13日判決では、2分の1ルールを修正して、夫(医師)6割・妻4割と判断されました。

この事案では、医師である夫が婚姻前に個人的な努力によって医師資格を取得し、婚姻後にその資格を活かして多大な労力を費やし高額な収入を得ていたことが評価されました。裁判所は、夫の寄与割合を6割、妻の寄与割合を4割とすることが合理的であると判断しました。妻が家事や育児だけでなく、診療所の経理を一部担当していたことも考慮され、妻の割合は4割に留まりましたが、2分の1ルールの例外を示す重要な判断となっています。

 

5.3 【表で比較】医師の財産分与における寄与割合の判断要素

財産分与の割合がどのように決まるのか、医師側と配偶者側のそれぞれの状況に応じた一般的な傾向を以下の表に整理しました。

判断要素

医師側の寄与度が高まりやすいケース(医師側の割合:60%〜)

原則通りになりやすいケース

資格・能力の形成

婚姻前から本人の努力で医師資格を取得し、個人の技術や知名度で稼いでいる

婚姻後に配偶者の経済的・精神的支援を受けて医師資格を取得した

経営への関与度

医師一人の手腕や采配によって病院・クリニックの売上が立っている

配偶者が看護師や事務長、経理担当として医療機関の運営に深くコミットしている

資産の規模

医師個人の特殊な才能や過酷な労働により、数億円規模の莫大な資産が形成された

一般的な勤務医であり、資産の規模が同世代の会社員と同等程度である

 

5.4 分与割合を有利に進めるためのポイント

医師が離婚時に不当に多くの財産を失わないためには、単に「自分が医師だから」と主張するだけでは足りません。調停や裁判において、自身の特殊な技能や努力が資産形成にどれだけ直接的に寄与したかを、客観的な証拠とともに説得的に主張・立証する必要があります。

具体的には、勤務実態を示す資料や、病院経営における自身の役割を示す事業計画書、売上実績などのデータを揃えることが重要です。また、婚姻前に築いた財産(特有財産)が混在している場合は、それを明確に区分して財産分与の対象から除外する手続きも欠かせません。これらの複雑な立証活動には専門的な知識が求められるため、早期に弁護士へ相談することをおすすめします。

 

  1. 医師の財産分与を弁護士に相談すべき理由

医師の離婚における財産分与は、一般的な会社員の離婚に比べて財産の種類が多岐にわたり、評価額の算定や分与割合の決定が極めて複雑になります。これらを当事者間だけで解決しようとすると、不当に低い金額で合意してしまったり、逆に過大な請求をされて泥沼化したりするリスクがあります。

 

6.1 複雑な財産の正確な評価と適切な分与額の算出

医師の財産分与では、預貯金だけでなく、医療法人の出資持分、個人開業医の事業用資産、高額な医療機器、退職金、有価証券、不動産など、評価が難しい資産が多数存在します。

弁護士に相談することで、これらの複雑な財産を漏れなく洗い出し、公認会計士や税理士などの専門家とも連携しながら、客観的かつ適正な評価額を算出することが可能になります。

6.1.1 主な財産と弁護士が介入するメリット

財産の種類

評価の難易度

弁護士によるサポート内容

医療法人の出資持分

極めて高い

純資産価額方式などを用いて適正な評価額を算定し、法人の経営権に配慮した解決策を提示します。

個人事業(クリニック)の資産

高い

医療機器や営業権(のれん)の評価、事業用債務の取り扱いを整理し、診療継続に支障が出ないよう調整します。

将来の退職金

中〜高

将来受け取る退職金について、支給の確実性や婚姻期間に応じた適切な分与額をシミュレーションします。

 

6.2 「2分の1ルール」の修正と特有の貢献度の主張

一般的な財産分与では、夫婦の財産を折半する「2分の1ルール」が原則です。しかし、医師の夫(または妻)が自身の特別な能力や努力によって高額な収入を得ている場合、この原則が修正され、医師側の取得割合が高くなるケースがあります。弁護士は、過去の裁判例や具体的な事情(医師としての資格取得への努力、診療報酬の獲得実績など)を分析し、医師特有の貢献度を法的に主張することで、有利な分与割合の獲得を目指します。

 

6.3 相手方との直接交渉による精神的負担の軽減とスピード解決

医師は日々の診療業務や当直、学会発表などで極めて多忙であり、離婚交渉に割ける時間は限られています。また、感情的な対立が深まると、業務に支障をきたすほどの精神的ストレスを抱えることになりかねません。弁護士が代理人となることで、相手方との直接のやり取りをすべて遮断し、交渉の窓口を一本化することができます。これにより、本業である医療活動に専念しながら、法的に整理された主張のもとで早期の合意を目指すことができます。

 

6.4 調停や裁判手続きの的確な進行

話し合いによる解決(協議離婚)が難しい場合、家庭裁判所における調停や審判、あるいは離婚訴訟へと手続きが進みます。例えば、調停手続きでは必要な資料の提出や財産目録の作成が求められます。弁護士に依頼していれば、裁判所に提出する書面の作成や証拠の整理をすべて任せることができ、不利な条件で調停が成立するリスクを回避できます。

 

6.5 将来の紛争を防ぐ「離婚給付契約公正証書」の作成

財産分与や慰謝料、養育費などの条件について合意に達したとしても、口約束や簡易な合意書だけでは、将来的に「言った・言わない」のトラブルが再発する恐れがあります。弁護士は、合意内容を明確にした離婚協議書を作成し、必要に応じて公証人が関与した「離婚給付契約公正証書」を作成する手続きをサポートします。これにより、将来の金銭トラブルを未然に防ぎ、完全な解決を図ることができます。

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養育費の相場と算定表の使い方|金額の算出方法や支払期間を大阪の弁護士が解説

 

  1. 当事務所のサポート

医師の離婚における財産分与は、医療法人の出資持分や多額の資産の評価、医師特有の寄与度の主張など、一般的な離婚案件に比べて専門的かつ複雑な論点が多数存在します。当事務所では、医師の皆様、またはその配偶者の方が抱える特有の課題に対し、豊富な経験と専門知識を活かして最適な解決をサポートいたします。

 

7.1 医師の財産分与における当事務所の4つの強み

7.1.1 医療法人の出資持分や複雑な資産の適正な評価

医療法人の出資持分や、多数の預貯金口座、有価証券、不動産などの正確な価値を把握することは、公平な財産分与の第一歩です。当事務所では、提携する税理士や公認会計士などの専門家と協働し、医療法人の資産価値や出資持分の評価額を税務・財務の観点から適正に算定します。これにより、不当に低い評価での妥協や、過大な分与要求を防ぎ、適正な条件での合意を目指します。

7.1.2 「2分の1ルール」の例外を認めるための戦略的交渉

医師の特殊な技術や過酷な労働、個人の開業資金の調達力によって築かれた財産については、通常の「2分の1ルール」が修正される可能性があります。当事務所では、過去の裁判例や具体的な貢献度を分析し、医師側の寄与度を高く評価させるための論理的な主張と立証を組み立て、交渉や調停に臨みます。

7.1.3 医療法人の経営権と診療環境の維持に配慮した解決策の提示

財産分与によって医療法人の資金繰りが悪化したり、経営権が脅かされたりすることは、医師にとって最大の懸念事項です。当事務所では、法人の経営に影響を与えないよう、代償金の分割払いの交渉や、退職金制度を活用した解決スキームを提案するなど、クリニックの安定した運営を最優先に考えた解決策を模索します。

7.1.4 診療に専念できる一貫した代理交渉と精神的サポート

多忙を極める医師にとって、離婚交渉や調停の手続きは極めて大きな負担となります。当事務所の弁護士が窓口となり、相手方や相手方弁護士とのすべての交渉・手続きを代理するため、ご依頼者様は日々の診療業務に専念したまま離婚手続きを進めることが可能です。

 

 

7.2 医師の財産分与でお悩みの方へ

医師の離婚における財産分与は、一般的な財産分与とは異なり、医療法人の出資持分や高額な資産、そして寄与度の評価など、専門的な論点が数多く存在します。これらを適切に処理し、公平かつ納得のいく解決を導くためには、医師の離婚を多く経験した弁護士事務所のサポートが不可欠です。

医師の財産分与のような複雑な事案では、個別具体的な主張立証が非常に重要です。当事務所は、これまで1200件を超える方の離婚問題・男女問題のご相談をお受けしてきました。その中で医師・歯科医師の方、またはその配偶者の方からご相談も数多くお受けしています。医師の離婚に関しては、その経験がモノを言います。財産分与でお悩みの方は、一人で抱え込まず、ぜひ一度当事務所までご相談ください。

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