• トップページ
  • 解決事例
  • Q&A
  • ご相談の流れ
  • 弁護士費用
  • 弁護士紹介
  • アクセス

財産分与 退職金

 

1 財産分与とは

財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して築いた財産を離婚にあたって清算する制度です。財産分与の対象となる財産は、夫婦が婚姻中に協力して築いたと評価でき、お金に換算できる財産であれば、どのような財産もその対象となります。そして、夫婦の共有名義ではなく夫婦どちらか一方の名義であっても対象となります。

つまり、実質的に夫婦が婚姻中に協力して築いたと評価でき、お金に換算できる限り、名義のいかんにかかわら財産分与の対象となります。

財産分与全般について、もっと詳しく知りたい方は、こちら(当事務所の財産分与解説ページ)

2 退職金は財産分与の対象となるか

夫婦どちらか一方がもらう給料は、夫婦が協力して築いた財産の典型です。そして、退職金は給料の後払いという性格を持つものと理解されており、例えば、専業主婦である妻も家事・育児をこなして家庭を守ることで、夫の退職金の形成に協力したと評価されます。

したがって、原則として退職金は財産分与の対象となります。

3 どのような場合に退職金が財産分与の対象となるか

⑴ 既に退職金を受け取っている場合

離婚時に既に退職して退職金を受け取っている場合、退職金は当然に財産分与の対象となります。もっとも、財産分与が、夫婦が婚姻中に協力して築いた財産の清算であることから、当然に退職金全額が財産分与の対象となるわけではありません。受け取った退職金のうち、婚姻期間(正確には同居期間)に応じた割合の金額が財産分与の対象となります。退職金全額が財産分与の対象となるのは、婚姻後に働き始め、退職金を受け取った後に離婚したような場合であり、そのようなケースはあまり多くないと思われます。

例えば、勤務年数30年で、そのうち婚姻期間(同居期間)が15年という夫婦の場合には、受け取った退職金額の2分の1(同居期間15年÷勤務年数30年)が財産分与の対象となります。

財産分与の対象となる退職金=退職金額×〔婚姻期間(同居期間)÷勤務年数〕

ここで注意しなければならないのは、離婚時に受け取った退職金が残っているかどうかです。財産分与は、現存する財産を分ける制度ですので、退職金を受け取ったのがだいぶ前で、離婚時までに生活費に使ってしまった分は、財産分与の対象とならず、離婚時に残っている退職金だけが分与の対象となります。但し、退職金を使ってしまった場合でも、退職金が形を変えてほかの財産として残っていると評価できる場合には財産分与の対象となります。例えば、退職金を元手に収益マンションや株式を購入した場合です。このような場合には、収益マンションや株式を財産分与の対象とします。

⑵ まだ退職金を受け取っていない場合

一昔前は、退職前の場合、将来退職金が支払われるかどうかが確実ではないことから、退職金が支払われることがほぼ確実と言えなければ、将来支払われる予定の退職金は財産分与の対象とはならないかのような議論がされていました。実際にそのようなインターネット記事も見られます。

確かに、将来の退職金については、勤務先の倒産や本人の事故・病気や解雇などによって、退職金支給の有無や金額が確定していないのは事実です。しかしながら、一方で、退職金は給料の後払い的な性格を有しており、一定期間勤務を続けることで、その勤務日数に応じた一定の退職金相当の後払い賃金が積み上げられているのもまた事実です。そのため、現在の離婚実務では、退職金が支給されることがほぼ確実でなければ、将来の退職金が財産分与の対象とはならないといったような縛りは無いと言ってよいと思われます。

したがって、就業規則に退職金規程が存在し、離婚時(別居時)にその支給要件を満たしている限りは、離婚時(別居時)に退職したと仮定して算出される退職金額も財産分与の対象となるのが原則と言えます。少なくとも、離婚調停の実務ではそのように扱われるのが一般的です。

4 財産分与として受け取ることのできる退職金を計算する方法

⑴ 既に退職金を受け取っている場合

先ほども記載しましたが、既に退職金を受け取っている場合には、退職金は当然に財産分与の対象になりますが、同居期間に応じた割合の金額に限られます。

財産分与の対象となる退職金=退職金額×〔婚姻期間(同居期間)÷勤務年数〕

そして、財産分与の夫婦間の割合については、夫婦それぞれ2分の1ずつという、いわゆる「2分の1ルール」がほぼ実務の原則として定着しています。

したがって、既に退職金を受け取っている場合に、財産分与として受け取ることのできる退職金の計算方法を計算式にしますと、

【退職金額×〔婚姻期間(同居期間)÷勤務年数〕】×1/2

となります。

もっとも、退職金を受給した後に婚姻生活の維持のための費用(例えば、子供の進学費用や家族旅行費など)に退職金が費消されていた場合には、

【退職金額の現存額×〔婚姻期間(同居期間)÷勤務年数〕】×1/2

という計算式で計算することになります。

⑵ まだ退職金を受け取っていない場合

先ほど記載しましたとおり、現在の離婚実務では、就業規則に退職金規程が存在し、離婚時に退職金規程の支給要件を満たしていれば、原則として退職金は財産分与の対象になります。

もっとも、既に退職金を受け取っている場合とは異なり、具体的な退職金額が不明です。そこで、財産分与の対象となる退職金額の計算方法が問題となります。これには、以下の3つ計算方法があります。

①離婚時(別居時)に、自己都合退職した場合の退職金額を基準とし、婚姻期間に相当する金額とする方法

②将来定年退職した場合に支給されるであろう退職金額を計算し、中間利息を控除して(定年退職までの年数に応じたライプニッツ係数を乗ずる)、離婚時の価格に引き直して清算する方法

③将来の退職金支給を条件として支給時に清算する方法

以上の3つ計算方法のうち、①の離婚時(別居時)に、自己都合退職した場合の退職金額を基準とし、婚姻期間に相当する金額とする方法が、もっともよく用いられます。勤務先から退職金額の証明書を発行してもらえば、計算の基準となる退職金額を簡単に知ることができ、計算方法として、単純明快なためです。この計算方法では、例えば、夫が勤務年数15年、そのうち婚姻期間10年、現在自己都合退職すると1200万円の退職金が支給されると仮定しますと、このケースでは、1200万円×(婚姻期間10年÷勤務年数15年)=800万円が財産分与の対象となります。そして、「2分の1ルール」に従いますと、妻が退職金の財産分与として受け取ることのできる金額は400万円になります。

もっとも、①の計算方法ですと、退職金規程に自己都合退職の場合による減額規程があると、定年退職した場合と比べて、財産分与される金額が低くなるといった不都合があります。

そのため、将来の定年退職した場合の退職金額を基準に計算をする②の方法をとる裁判例もあります。

ただ、②の計算方法の場合、離婚から実際の定年までの間に、解雇などの事情によっては退職金が減額されたり不支給となってしまう場合もあり得ます。裁判所が②の計算方法を使うのは、定年退職が数年先に迫っているなど、よほどのことが無い限り定年退職を前提とした退職金が支払われる可能性が高い場合に限られるといえます。実際に裁判所が②の計算方法をとったのも、6年後に定年退職が迫っているというケースでした。

また、①の計算方法でも②の計算方法でも、退職金を受け取る前に、財産分与をしなければなりませんので、ほかに財産分与の対象となる財産が無い場合には、財産分与は一括払いが原則ですので、離婚時に一括払いでの解決ができません。

そこで、「退職金を支給されたときは、金○○万円を支払え」という③の方法による判断を下した裁判例もあります。

当事者間に争いが無ければ、①~③のどの計算方法によることもできます。

一方、当事者間で争いになってしまい、裁判所が退職金の財産分与を判断する場合には、②や③の方法がとられるのは、定年退職間近といった場合に限られると思われます。多くのケースでは①の方法によって計算されることになるでしょう。

5 退職金の財産分与の請求方法

通常は離婚協議の際に、財産分与の話し合いも合わせて行うのが多いです。ただ、必ず離婚時に財産分与をしなければならないわけではなく、先に離婚をしてしまった場合であっても、離婚後2年以内であれば、相手に財産分与を請求することができます。

離婚後の財産分与請求について、詳しくはこちら(当事務所の離婚後における財産分与解説記事)

退職金の財産分与の進め方としましては、既に退職金を受け取っている場合には、実際に受け取った退職金の金額と、現在残っている退職金の金額を把握する必要があります。通常であれば、口座振込で受け取っているでしょうから、退職金受取口座の通帳の履歴を開示してもらうことになります。また、受け取った退職金に関しては、勤務先から発行された退職金の支払明細を確認します。

一方、まだ退職金を受け取っていない場合には、勤務先から別居時に退職した場合における退職金額の証明書を取り付けてもらうか、退職金額の計算方法のわかる退職金規程の写しを提供してもらい、別居時に退職したと仮定した場合の退職金額を計算することになります。

相手が退職金額のわかる資料を提供しない場合には、弁護士会照会(23条照会ともいいます)や裁判所の調査嘱託などの手続きを使っていくことになります。

また、相手が退職金を使ってしまう危険がある場合には、その危険性が高いと認められれば、担保金を納める必要はありますが、退職金の仮差押といった手続きを取ることもできます。

そして、財産分与の対象となる退職金額が確定した場合には、分与割合(通常は2分の1ずつ)によって、分けることになります。

6 当事務所でサポートできること

以上のとおり、退職金の財産分与についての考え方を説明させていただきましたが、以上の説明は、退職時に一括で支払われる退職一時金を念頭にしています。

現在では、退職一時金だけではなく、退職金の一部を一時金ではなく退職年金(企業年金)として支払う企業も増えています。退職金の制度自体複雑化しています。また、退職一時金についても、従来は終身雇用を前提とした基本給連動型が主流でしたが、近時は、特に大手・中堅企業では、成果・業績連動型のポイント方式に移行している企業が多くなっており、その計算方法も複雑化しています。

退職金の財産分与で損をしないためにも、専門家である弁護士、特に離婚問題に関して経験豊富な弁護士に相談されることをお勧めします。

財産分与の成功には初動が大事です。当事務所は初回相談1時間無料です。退職金の財産分与でお困りの方は、お気軽にご相談ください。


離婚・慰謝料・財産分与の無料相談

離婚・男女トラブルに関するご相談メニュー

PAGE TOP