■目次 1. 離婚協議書とは 2. 離婚協議書に記載すべき内容 3. 離婚協議書を作成する流れ 4. 離婚協議書...
財産分与 自動車
1. 財産分与とは
2. 自動車は財産分与の対象となるか
3. 財産分与の対象とならない自動車
4. 自動車の財産分与の方法
5. オートローンが残っている場合、自動車が財産分与の対象となるか
6. オートローンが残っている自動車の実際の処理方法
7. 当事務所でサポートできること
1 財産分与とは
財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して築いた財産を離婚にあたって清算する制度です。したがって、実質的に夫婦が婚姻中に協力して築いたと評価でき、お金に換算できる限り、夫婦の名義いかんにかかわらず財産分与の対象となります。
財産分与全般について、もっと詳しく知りたい方は、こちら(当事務所の財産分与解説ページ)
2 自動車は財産分与の対象となるか
上記のとおり、財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して築いた財産を離婚にあたって精算する制度です。したがって、婚姻中に夫婦いずれかが購入した自動車は、財産分与の対象財産となるのが原則です。
3 財産分与の対象とならない自動車
一方で、夫婦が婚姻中に協力して築いた財産と評価できない場合には、財産分与の対象とはなりません。このような財産を「特有財産」といいます。特有財産については、民法に以下のとおり規定されています。
民法762条1項
「夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。」
以下のような場合、自動車は「特有財産」にあたり、財産分与の対象とはなりません。
⑴ 婚姻前に購入した自動車
⑵ 婚姻前から持っていた貯金で購入した自動車
⑶ 婚姻中に親から贈与や相続によって取得した自動車
⑴ 婚姻前に購入した自動車
夫婦のどちらかが婚姻前に購入した自動車は、まさに「夫婦の一方が婚姻前から有する財産」にあたるため、財産分与の対象とはなりません。夫婦の協力によって築いた財産ではないので、実質的にも当然の結論です。
もっとも、婚姻前に購入した自動車であっても、オートローンで購入し、婚姻後にオートローンを、夫婦の共有財産(婚姻後の給与や婚姻後に作った貯金など)から返済したような場合には、婚姻後の返済分に相当する価値ついては、夫婦の協力によって得た財産と評価できるため、財産分与の対象となります。
⑵ 婚姻前から持っていた貯金で購入した自動車
婚姻前から持っていた貯金は、「夫婦の一方が婚姻前から有する財産」(特有財産)の典型であり、財産分与の対象とはなりません。そして、「特有財産」である貯金によって購入した自動車も「特有財産」である貯金が形を変えたものと評価できるため、同じく財産分与の対象とはなりません。
⑶ 婚姻中に親から贈与や相続によって取得した自動車
夫婦のどちらか一方が親から相続した自動車や贈与された自動車は、「夫婦の一方が…婚姻中自己の名で得た財産」にあたり、財産分与の対象とはなりません。婚姻中であっても、夫婦の協力によって築いた財産ではないので、財産分与の対象とならないのは当然です。
また、親から相続や贈与によって得た金銭で購入した自動車も「特有財産」が形を変えただけですので、財産分与の対象となりません。
4 自動車の財産分与の方法
自動車の財産分与の方法としては、次の二つの方法が考えられます。
⑴ 自動車を売却する方法
⑵ どちらか一方が自動車を引き取る方法
⑴ 自動車を売却する方法
夫婦で所有している自動車について、離婚後はいずれも使用しないという場合には、自動車を売却して売却代金を分けることになります。
自動車の財産分与の場合、自動車の価値をいくらと評価するかで揉めることが多いですが、売却する場合には、自動車を評価する必要が無いため、自動車の評価が争点になることがありません。
売却代金を分けるだけですので、単純明快です。
⑵ どちらか一方が自動車を引き取る方法
一方で、夫婦どちらかが離婚後も引き続き自動車を使用する場合には、自動車を引き取った上で、代償金を支払うという方法によって財産分与することになります。
この場合、実際に自動車を売るわけではないので、自動車の価値を査定し、自動車を引き取る側は、その価値の半額を相手に代償金として支払います(分与割合は「2分の1ルール」に従っています。)。
そこで、自動車の価値を査定する必要がありますが、その査定(評価)方法が争点となりがちです。自動車を引き取る側は、自動車の価値が安ければ安いほど、相手に渡す代償金も安くすみます。反対に、自動車を渡す側は、自動車の価値が高ければ高いほど、受け取る代償金の金額も高くなります。お互いの利害が真っ向から対立するため、争点となりがちです。
自動車の価値を査定するには以下の方法があります。
① レッドブック(オートガイド自動車価格月報)を使用する方法
② 中古車売買業者の査定を取る方法
③ インターネットの中古車販売サイトを使用する方法
①については、まず、車検証で、自動車の年式、型式、メーカー名等を確認し、走行距離計で走行距離を把握します。その情報をもとに、レッドブックに記載された同等の中古車の価格相場を参考に価値を査定します。一般の方には、レッドブックに馴染みがないのでわかりにくいかもしれません。
②については、無料査定してくれる業者も増えていますので簡便ですが、中古車業者の買取価格になるので、査定の金額は低くなりがちです。
③は、①の方法と同様に、財産分与の対象となる自動車の年式、型式、走行距離などの条件から検索された自動車の平均値を査定額とします。中古車の市場価格を簡単に知ることができますが、年式、型式などは同じでもカスタムパーツなどによって、価値が本来よりも大きくなってしまう場合があり得ます。
いずれの方法を取るにしても、
・予めどのような方法で査定するのかを事前に決めておく
・査定の結果については争わない
・それぞれが出した査定額の平均値をとる
など査定の方法に関して、できる限り揉めない方法を事前に夫婦で取り決めをしておくべきです。
5 オートローンが残っている場合、自動車が財産分与の対象となるか
⑴ アンダーローンの場合
アンダーローンとは、自動車の価値がオートローン残高を上回る場合です。
自動車の価値>オートローン残高
自動車の価値からオートローン残高を控除した金額が、自動車の実質的価値ですので、これを財産分与の対象と考えます。例えば、自動車の価値200万円、オートローン残高100万円とした場合、自動車の価値200万円-オートローン残高100万円=自動車の実質的価値100万円が財産分与の対象と考えます。
⑵ オーバーローンの場合
オーバーローンとは、オートローン残高が自動車の価値を上回る場合です。
オートローン残高>自動車の価値
この場合、自動車の価値からオートローン残高を控除すると、マイナスとなります。自動車の実質的価値がないということになりますので、当該自動車は財産分与の対象とはならないと考えます。
6 オートローンが残っている自動車の実際の処理方法
前記しましたとおり、自動車の財産分与の方法としては、自動車を売却する方法と、どちらか一方が自動車を引き取る方法があります。但し、オートローンが残っている場合、通常であれば、オートローンを担保するために、自動車の所有者がディーラーのままやローン会社の名義になっています。これを「所有権留保」といいます。
そのため、自動車を売却するにしても、どちらかが使い続けるにしても、登録名義上の所有者であるディーラーやローン会社と相談しながら進める必要があります。
⑴ 自動車を売却する方法
登録名義上、ディーラーやローン会社が所有者である以上、自動車を売却するには、ディーラーやローン会社の同意が必要になります。
① アンダーローンの場合(自動車の価値>オートローン残高)
この場合は、自動車を売却することで、ローン会社はオートローン残額をすべて回収することができます。したがって、ディーラーやローン会社は売却に同意してくれます。例えば、自動車の価値200万円、オートローン残高100万円の場合、自動車を200万円で売却し、その売却代金200万からオートローン残高100万円を返済し、残額100万円を2分の1ずつ、つまり50万円ずつ分けることになります。
② オーバーローンの場合(オートローン残高>自動車の価値)
この場合は、売却に所有名義人であるディーラーやローン会社の同意が必要です。その同意を得るためには、売却代金をすべて返済に充てても残るオートローンについて、ローン会社に一括弁済する必要があります。その際、ローン会社へ返済義務があるのは、ローンを組んだローン名義人だけですが、婚姻中に家族で使う自動車のためのオートローンですので、本来であれば夫婦が2分の1ずつ負担することになります。実際には、夫婦の共有財産である預貯金などから返済することになるでしょう。
以上のとおり、自動車の売買代金はすべてオートローンの返済に充てられることになります。したがって、自動車を売却しても、手元に現金は残らないため、財産分与はありません。
⑵ どちらか一方が自動車を引き取る場合
前記しましたとおり、オートローンがある場合、所有者はディーラーやローン会社の名義となっており、実際に自動車を使用する方、つまりオートローン名義人は「使用者」として登録されます。夫婦のどちらか一方が自動車を引き取る方法については、「使用者」であるオートローン名義人が引き取るか、そうでないかによって対応が異なります。
以下、使用者・オートローン名義人が夫である自動車を念頭に説明します。
① 使用者・オートローン名義人である夫が自動車を引き取る場合
登録名義やローン名義の変更などの手続きは不要です。夫は変わらずにオートローンを支払っていくことになります。
ア アンダーローン(自動車の価値>オートローン残高)の場合
夫は妻に対して、自動車の価値からオートローン残高を控除した自動車の実質的価値の2分の1に相当する金銭を代償金として支払う必要があります。
例えば、自動車の価値150万円、オートローン残高50万円の場合、自動車を引き取る夫は、自動車を手放す妻に対して、自動車の実質的価値100万円の2分の1に相当する50万円を代償金として支払うことになります。
イ オーバーローン(オートローン残高>自動車の価値)の場合
例えば、自動車の価値100万円、オートローン残高140万円の場合、自動車の実質的価値はマイナスです。夫は、価値の無い自動車を取得するだけですので、妻に対して代償金を支払う必要はありません。
夫は、引き続きオートローンを負担していくことになりますが、一応、債務も財産分与の対象となりますので、オートローン残高140万円から自動車の価値100万円を控除した残債務40万円について、本来は夫婦で平等に20万円ずつ負担すべきであるところ、ローン会社に対しては、夫がオートローン全額を返済していくことになります。
この処理については、夫婦の協議が必要ですが、自動車のほかに、例えば預貯金100万円といった財産がある場合には、オートローン残高をすべて負担する夫が、妻が本来負担すべきオートローン残債務分20万円を、預貯金100万円からまず取得し、残預貯金80万円を夫婦で折半するというように調整することもできます(つまり、預貯金100万円について、夫が20万円+40万円=60万円を取得し、妻が40万円を取得すると調整することになります。)。もっとも、夫が今後は自動車を使用することができるという事実上の利益を得ることから、オートローン残高はすべて夫が負担するという処理をする場合も多いと思われます。
② 使用者・オートローン名義人でない妻が自動車を引き取る場合
この場合は、自動車の登録名義やローン名義の変更を行う必要があります。
このとき、オートローン残高をすべて完済する場合には、自動車の名義変更を行えば足ります。しかし、オートローン残高を完済しない場合には、名義の変更について「所有者」として登録されているディーラーやローン会社の同意を得なければなりません。この場合は、オートローンの名義人も妻へと変更する必要があります。妻に安定的な収入があるなど返済能力が無いとオートローンの名義変更の審査が通らず、結果、自動車の名義変更ができない場合があるので注意が必要です。
ア アンダーローン(自動車の価値>オートローン残高)の場合
上記の名義変更のほか、アンダーローンの場合は、自動車を引き取る妻が夫に対して、自動車の価値からオートローン残高を控除した自動車の実質的価値の2分の1に相当する金銭を代償金として支払う必要があり、この処理は、夫が自動車を取得する場合と同様です。
イ オーバーローン(オートローン残高>自動車の価値)の場合
オーバーローンの場合の処理も、夫が自動車を取得する場合と同様で、オーバーローンの場合は自動車の実質的価値が0ですので、夫に対して代償金を払う必要はありません。しかし、オートローン残高から自動車の価値を控除しても、なお残るオートローン残高の処理方法について、夫婦で協議する必要があります。
7 当事務所でサポートできること
以上のとおり、自動車の財産分与についての考え方を説明させていただきましたが、自動車の財産分与では、自動車の価値を査定してもらったり、オートローンを使っている場合には、オートローン会社とやり取りしなければならなかったりと、慣れない手続きをしなければならない場面が多くあります。わからないことばかりで、離婚の話し合いがスムーズに進まない場合も考えられます。
財産分与に関して、経験豊富な弁護士に依頼された場合には、慣れない手続きに困ることもありませんし、スムーズに協議を進めることができます。
財産分与の成功には初動が大事です。当事務所は初回相談1時間無料です。財産分与でお困りの方は、お気軽にご相談ください。