■目次 1. 離婚協議書とは 2. 離婚協議書に記載すべき内容 3. 離婚協議書を作成する流れ 4. 離婚協議書...
会社経営者の財産分与
1. 会社経営者の財産分与
2. 会社名義の財産が財産分与の対象となるか
3. 会社経営者の財産分与で注意すべき財産は?
4. 会社経営者の夫との財産分与の割合は?
5. 当事務所でサポートできること
1 会社経営者の財産分与
会社経営者の方が離婚する場合、多くの収入を得ており多額の資産を保有している場合が多く、財産分与が問題となりやすいといえます。
ここで、財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して築いた財産を離婚にあたって清算する制度をいいます。そして、夫婦が婚姻中に協力して築いたと評価でき、お金に換算できる財産であれば、どのような財産も財産分与の対象となります。会社経営者の方の離婚にあたっては、会社名義の財産が財産分与の対象となるかしばしば争点となります。また、高額な資産を持っているために対象となる財産の評価が争点となることも多いです。さらに、財産分与の割合が争点となる場合も見られます。
以下では、会社経営者の方の財産分与に関する注意点にについて記載します。
2 会社名義の財産が財産分与の対象となるか
夫が会社経営者の場合、会社名義で購入した事務所兼自宅に住んでいるとか、妻が会社名義で購入した自動車を使っているといった話を聞くことがあります。このような場合には、会社名義の財産が財産分与の対象となるのか質問されることがあります。
結論から申しますと、会社名義の財産は財産分与の対象とはならないのが原則です。会社名義の財産は、経営者個人からは切り離された会社自体のものであり、経営者個人の財産とは別だからです。後で記載しますが、会社名義の財産については、夫の会社の自社株の中で評価することになります。
一方、会社とはいっても、夫が一人で経営しているような、個人事業主と同視できるような規模の小さい会社もあり、会社の財産と個人の財産の区別があいまいになっていることもあります。こうした場合には、会社名義の財産でも、実質的には夫婦の共有財産であるとして、財産分与の対象になる可能性があります。
3 会社経営者の財産分与で注意すべき財産は?
先に記載しましたとおり、会社経営者の場合、収入に比例して持っている財産も多くなる傾向にありますので、必然に財産分与の対象となる財産も多くなることが予想されます。財産分与の対象となる財産については、お金に換算できるものであればすべて対象となりますが、会社経営者の場合、預貯金や不動産なども多くなりその整理自体も大変ですが、動産・退職金・有価証券にも注意する必要があります。また、会社経営者の場合、自社株を持っていること場合が大半と思われますので、これらの評価や処理方法も注意が必要です。
①動産(高価品)
会社経営者の場合、高価な自動車を複数台所有していたり、価値の上がった高級腕時計を何十個も所有している方もいらっしゃいます。そのほか、自宅の家具を外国製の高級家具で揃えていたり、金製品やダイヤなどの高価な貴金属を多く所有していることもあります。さらには、絵画や骨董品などを保有している場合もあり得ます。こうした動産も、夫が特有財産(結婚前から持っていた預貯金など)で買ったものでなく、婚姻中に共有財産から購入したものなら財産分与の対象になります。夫の給与(役員報酬)も夫婦の共有財産であることが原則ですから、婚姻中にこの給与から購入した物は、財産分与の対象となるのが原則です。
上記のような高価品については、時価額を適切に査定してもらう必要があります。時価額の査定金額で揉めることも多くなるでしょうから、例えば高くても安くても一社の査定に従うなど、事前にご夫婦で査定方法の取り決めをしておくなどの工夫が必要です。
②退職金(小規模企業共済)
一般の方は忘れがちですが、退職金も将来支給される可能性が高いと認められる場合には、財産分与の対象となります。会社と会社経営者の関係は雇用関係ではなく、委任契約のため、会社員に支給される通常の退職金の支給はありませんが、「退職慰労金」が支給される場合があります。退職慰労金が支給される場合には、その退職慰労金も財産分与の対象となり得ます。
また、退職金代わりに小規模企業共済に加入している場合もあります。月額7万円、年額84万円を上限に加入でき、掛金全額が所得控除できる税制メリットがあることから、加入されている方は多くいます。金額も2000万円以上になることもあり得ます。
会社経営者の場合、上記のような退職金に相当する金員も高額になることが予想されるため、財産分与の対象とできる財産であるのか、念頭に置いておく必要があります。
③有価証券
婚姻中に夫婦が取得した株式などの有価証券も、夫婦どちらの名義であるかは問わず、特有財産で取得されたものでない限り、財産分与の対象に含まれます。
株式を財産分与する場合、株式数に関しては、別居時を基準に算定します。例えば、夫がA会社株式を別居時に2万株持っていたとして、別居後の3万株買い増しして5万株保有したとしても、財産分与の対象となるのは、別居時に持っていた2万株ということになります。また、株式に関しては、日々評価が変動しますので、いつの時点での評価を基準とするかも問題となりますが、株式評価の基準時は離婚時(正確には離婚裁判の口頭弁論終結時)とされています。上記の例で、A会社株式が別居時に1株100円だったとして、離婚時に200円に上昇していた場合は、評価額は離婚時の1株200円を基準とすることになります。したがって、上記の例では、別居時2万株×離婚時1株200円=400万円が株式の評価ということになります。
株式は以上のように評価額を決定しますが、証券会社で取引される上場会社の株式であれば、株式市場の時価を用いて評価額を算出することができますので、株式の評価自体はあまり問題になりません。一方、非上場会社の株式は、取引される市場自体がありませんので、評価の方法が問題となります。非上場株式の評価方法は複数あります。通常は純資産価格方式で評価することが多いと思われますが、どの方法を選択するかによって株式の評価額が変わるため、どの評価方法を選択するかを含め、株式の評価額に争いが生じるケースもあります。
④自社株
会社を起業された会社経営者の場合、自社株(自分の会社の株式)を保有している場合がほとんどです。有価証券のうち自社株も財産分与の対象になる可能性があります。婚姻中に出資し設立した会社である場合は、その自社株は財産分与の対象となるのが原則です。
自社株の場合、これを相手に財産分与してしまった場合、会社の経営に大きな影響が及ぶおそれがあります。株主が会社の経営にどの程度参画できるかは、株式の保有割合によって異なります。離婚にあたって、相手に自社株を過半数以上与えることはまず考えられませんが、例えば、3%以上の株式を保有する場合には、会計帳簿(総勘定元帳や現金出納帳、仕訳帳など)の閲覧と謄写を請求することができてしまいます。また、相手の持ち株比率が3分の1以上になってしまうと、会社の重要事項(例えば、事業譲渡や合併、新株発行、解散など)に関する株主総会の特別決議を単独で否決することができてしまいます。
このように、離婚する相手に自社株を保有されるということは、経営上の大きなリスクになりかねません。離婚後も会社を安定的に経営できるよう、自社株は、可能な限り経営者ご自身が取得し、その代わり相手には金銭やほかの財産を渡すことによって調整していくべきです。
4 会社経営者の夫との財産分与の割合は?
妻が専業主婦の場合、多くの収入を得ている会社経営者の方から、自分の才覚によって多くの財産を取得できたはずなのに、それでも財産分与の割合は夫婦2分の1ずつなのかといった相談を受けることがあります。
この点、財産分与の割合については、特別な事情がない限り、夫婦2分の1ずつという「2分の1ルール」が実務の原則として定着しています。このように「2分の1ルール」が原則ですが、反対に特別な事情があれば「2分の1ルール」は適用されないことになります。しかし、そのような場面は極めて例外的な場面に限られます。具体的には、夫が並外れた高収入で(年収2,3000万円では全くこれにあたりません)、財産分与の対象となる財産も相当多額(3億円以上が一つの目安になると思われます)に上る場合や、専業主婦の妻が家事も満足にせずに遊び惚けていたような場合くらいであると考えられています。
5 当事務所でサポートできること
財産分与は、
まず、①財産分与の対象となる財産を確定し、
次に、②確定した夫婦共有財産を金銭評価し、
そして、③財産分与の割合を決めて分配する
という流れになりますが、会社経営者の財産分与に関しては、以上で見てきたとおり、①~③すべての場面で問題となる可能性があります。
したがって、自分が会社経営者でも、相手が会社経営者であっても、財産分与を有利に進めていくには、早い段階で、専門家である弁護士、特に離婚問題に関して経験豊富な弁護士に相談していただきたいと思います。
当事務所では、離婚問題の中でも特に財産分与の分野に注力しており、弁護士同士が事務所内で情報共有し、ノウハウや経験を蓄積しています。
財産分与を有利に進めるには初動がなにより大切です。当事務所は初回相談1時間無料です。財産分与でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
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