■目次 1. 離婚協議書とは 2. 離婚協議書に記載すべき内容 3. 離婚協議書を作成する流れ 4. 離婚協議書...
財産分与において親からの贈与が考慮された事例
【事案の概要】
依頼者:夫 50代 会社員
妻 50代 アルバイト
子 無し
依頼者(夫)は、妻と離婚調停中であり、弁護士をつけずに本人で調停を行っていた(妻には弁護士がついていた)。夫は、妻と離婚自体はやむを得ないと考えていたが、財産分与について、同居中、夫は実母から贈与を受けた金銭で住宅ローンを返済していたが、調停において、そのことが全く考慮されていない点に大きな不満を抱いていた。
夫は、自らが自宅不動産を取得し、妻に対して分与金を支払うが、その分与金を算出する際に、夫が実母から贈与を受けた金銭で住宅ローンを返済していたことを考慮して欲しいと考えていた。
夫の実母から贈与を受けた金銭で住宅ローンの返済をしていたことについて、妻は、「覚えていない」と反論をしていた。
【当事務所の活動】
まず、夫から、どのような方法で実母から贈与を受けていたのかを聞き取ったところ、振込で金銭を受け取っていたこともあるが手渡しで受け取っていたこともあるとのことであった。そこで、ひとまず、残っている通帳の入金記録を調べることとした。
入金記録をみると、約10年間に渡り、実母から夫名義の口座への継続的な入金が見られた。実母から入金があった金銭は、その大部分が、その後、夫名義の別口座である住宅ローン支払口座に移動していたため、これらの入出金記録を裁判所に提出するとともに、これに基づき、実母から夫への贈与金が住宅ローンの支払いに使われていたという資金の流れを詳細に説明した主張書面を裁判所に提出した。
加えて、夫婦の家計を詳細に示し、当時の夫婦の収入に比べて一月あたりの住宅ローンの返済額が高額であることを指摘し、夫婦の収入のみでは月々の住宅ローンを返済していくことができなかったにもかかわらず、他に借金をすることなくローン返済ができていたことなどを、詳細に主張した上、調停委員の説得に努めた。
【解決の内容】
実母から金銭の贈与があったことと、その金銭が住宅ローンに費消されたことを、通帳の入出金履歴という客観的な資料をもって説明をしたことによって、調停委員を十分に納得させることができた。そのため、調停委員において、実母から夫に対し贈与があったこと、その金銭で住宅ローンの大部分を支払っていたことを前提に、夫から妻への自宅不動産に関する分与金の額を調整させた内容で、調停を進めてもらうことができた。
その結果、夫は納得のうえ、妻に分与金を支払うとともに、自宅不動産を取得することができた。
【解決のポイント】
実母から金銭の贈与を受けたこと、その贈与を受けた金銭の大部分について住宅ローンに費消したことについて、客観的資料をもとに説明をすることができたことが、当方に有利な解決を勝ち取ることにつながったポイントでした。
財産分与において、実親からの金銭の贈与が問題となることはよくありますが、現金を手渡しで受領していることも多く、客観的な資料がない場合が多いのも事実です。このような場合、通常であれば、実親からの贈与自体認めてもらえません。しかし、本件のように、現金手渡しのほかに、継続的な通帳振込があり、かつ、夫婦の家計を詳細に示し、当時の夫婦の収入に比べて多額の住宅ローンを借金もせずに返済することができていたことなど、実親からの金銭の贈与があったこと及び贈与金が住宅ローンに費消されたことを推認させる事実を主張することで、実親からの金銭の贈与に配慮した解決ができることもあります。
住宅ローンに限らず財産分与に関連して、実親からの金銭贈与が問題となることはよくあります。
このようなケースでお悩みの方は、ぜひ一度、当事務所までご相談ください。
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